二泊三日の旅程では、思惑通りの山並みを眺めることは叶わない。雄大な山容こそ雲の中に隠れがちだからだ。せっかく来たのに、と何度天を仰いだことか。グレイの空の向こう側に三角の稜線を想像したことか。
山が見えずとも、楽しみはあるだろう。そういう風に思ったこともあるが、それは負け惜しみである。本心では、山が見えなければ意味がないと、旅のあいだずっと嘆き続けている。
二泊三日の旅程では「たいてい」思惑通りの山並みを眺めることは叶わない。裾野に暮らし、毎日仰ぎ見ることができる。そうでなければ見えない日に、とても平静を保ってはいられない。
明日もあるか。そう思えることが一番の幸せ。見えなかった時を想像すると、松本に向かう気になれない。