ベンチに座り考え事をしていた。碌山館のほうを見ると彼方にも思案中の人があった。人間は考えなくていいと言われたって、常に何かを考え、思ってしまう。口に出さないからと言って、何も考えていないわけじゃない。それぞれ、無意識に思考を巡らせているものだ。
思うだけなら何も起こらないが、ひとたびそれをアウトプットすると様々なコトが起こっていく。それは決してよい反応だけじゃない。つぶやき一つが破綻の引き金になることもある。自分だけでなく相手も常に色々考えて生きているから、地雷はそこかしこに埋まっている。
張り詰めた糸の上を、そろりそろりと渡っている。精神状態としてはそんな感じなのかもな。ぷつり と切れないように、よけいな負荷をかけないように。それぞれ「慎重に」暮らしているのかな。
ならば、不用意に言葉を吐くより、深呼吸して思い切り息を吐くほうがいい。思ったことをロングブレスとともに一旦、外へ放出する。それだけでだいぶスッキリする。そんなことを梢を見上げて考えていた。
吐き出すのは、思考だ。