ツアーレップ(Tour Rep)

選手用ウェッジ PHOTO BY Y.TAKANASHI

Tour Rep/ツアー担当のこと。

聞きなれない言葉かもしれませんが、れっきとした職業です。海外では、プロゴルフツアーに帯同するゴルフメーカーのスタッフを総称してこう呼んでいます。日本ではツアー担当ですね。

僕はこの職業を通じて、いろいろなことを学ぶことができました。でも、きっと何をやっているかは、普通の人は想像もできないでしょうね。役割としては、カッコよく言えばF1のピットクルーみたいな感じですが、日本では、ツアープロの御用聞きの様な役割が多いかもしれません。試合のはじまる前の練習日にツアープロの横に居て、お世話をしているというイメージでしょうか? クラフトマンも居ますので、クラブをいじる専門家という見方もあるかもしれませんね。

僕がこの職業に憧れて、この世界に入ったのは、アメリカを代表するスティーブ・マタとボブ・ボーケイいうタイトリストの元ツアーレップ2名に出会ったからです。スティーブはまさにPGAツアーのレップ中のレップ。彼は、練習日では、選手より目立つ存在でした。そして、なによりかっこいいと思ったのは、ツアー選手と対等の立場で話し合っている姿です。タイガー・ウッズのクラブを担当したこともある、豊富な知識と経験を持つ彼に相談に来る選手も多数いましたし、そういった選手の悩みに真摯に応えている姿に憧れました。

ボブ・ボーケイさんと/2012年撮影

ボブ・ボーケイはツアーレップ界で、おそらく世界一忙しい人だったでしょう。毎週100人近い選手が彼のデザインしたウェッジを使用しており、全員がボブと話したがっている、そんな感じでした。ボブはそんな選手一人ひとりに全力で相手をします。決して手を抜くことはありません。見知らぬ無名の選手でも、キャディーバッグに自分の製品が入っていると必ず声をかけ、状態を確認するということをやってのけます。彼に一日中ついて回ったことがあったのですが、こっちが先にギブアップしてしまいそうなくらい、体力も頭も使う一日だったのを覚えています。まさにスーパーマンです。彼の悪い評判を聞いたことがありません。そして、その積み重ねの結果、ウェッジのことと言えば、真っ先にボブに聞きに行く、という状況が出来上がっていきました。アメリカ人は基本フランクで、仕事上は互いを尊重し、上下関係はなく、ビジネスパートナーとして接する、という土壌があるからなのかもしれません。どうしても、日本の場合、主従の関係ができてしまい、ツアー選手をお客さん扱いしてしまうため、選手の意見や要望をそのまま通してしまう習慣があるように思います。

もちろん、そういったことも必要なのですが、ゴルフクラブというのは感覚だけではなかなか決められず、そこに裏付けがなければ、確信をもって使用することができません。プロの意見だからと言って、すべてが正しいわけでもなく、プロも試してみなければわからないことがたくさんあるはずです。そういう時に、良き相談相手として、ツアーレップが対等の立場で意見を述べることができれば、良い道具との出会いも遠くはならないはずです。そして選手が自分の道具に対して自信を持つことができ、試合に臨むことができれば、結果もおのずとついてくることでしょう。

決して出しゃばらず、黒子のように動きつつ、必要なときはしっかりとものを言う。そうしてツアーにとってなくてはならない存在となり、ツアーの一部を担っている職業。それがツアーレップなのだと思います。プロツアーには、いろいろな役目の人がいて、そして一試合一試合が成り立っています。そんな中の、一部に、ツアーレップという存在があることを、頭の片隅にでも止めておいていただければ嬉しいです。そして、そういった存在になりたいと思う人が、一人でも出てきてくれればいいなと思っています。

この記事を書いた人

三瓶大輔

三瓶大輔

Cultivator/ DAISUKE MIKAME
(しごと)
93年よりブリヂストンスポーツゴルフクラブ開発部に所属。主に計測評価グループで同社ゴルフクラブのほぼ全モデル(J’s、 TOURSTAGEなど)に関わりました。01年に同社ツアー担当として渡米、日米のトッププロとコミュニケーションをとるようになりました。03年後半からはアクシネット(タイトリスト)に移籍。総合契約選手を担当する傍ら、若手発掘の一環として有望な学生たちとの交流も始まりました。09年よりウェッジ・パター専任となり、スコッティ・キャメロン、ボブ・ボーケイの2大巨匠から多くのことを学んでいます。現在はその経験を活かし日本国内でボーケイの哲学を広めるため、国内で唯一となるウェッジフィッティングイベントを毎週末開催。これまで担当したゴルファーはのべ1,500人を超えています。
(じぶんのどうぐ)
自分の使う“道具”にも相当こだわっています。ゴルフ歴37年、ありとあらゆるクラブ、スペックをテストしてきました。その経験も加味して、自分なりにゴルフクラブの理想像をもっています。JGA ハンディキャップ最高+1.4。慶応義塾大学理工学部卒。