
浜に打ち寄せる波。引き際に顔を出す丸い石。寄せては返す自然の営みは、岩肌のカドをとり滑らかなサーフェイスを生み出している。波打ち際に残る丸石を手にした時に思い出したのは、カリフォルニア州サンマルコスにある「スコッティ・キャメロンパタースタジオ」の工房で見た光景だった……。
【職人に目指すべき質感を伝えるためのツール】
ヴィンテージキャメロンのレストアやカスタムチューン、ツアー支給パターを作る本拠地の工房。いくつかの作業待ちヘッドが乗せられたワゴンの上に丸い石が一つ置かれていた。石の上には赤いペンキで「サークルT」が描かれていた。ファクトリーツアーを担当してくれたスタッフに「これはペーパーウェイト?」と聞くと、彼は首を振ってこう答えた。
「違うよ。これはスコッティが職人たちに触らせるためのものなんだ。パターヘッドの最終研磨はこれくらい滑らかに。しかも曲線もこのように自然なラインを意識してほしい、と。彼はビーチで石を拾ってきてこれが理想だと伝えているんだ」
ヘッドの最終研磨を任される研磨職人はスタジオでも3人しかいないという。作業しているところを見ても「グラインド」と呼ぶほど削っているわけではない。工場見学でよく見る火花も散っていない。ベルトグラインダーでほんのり触っている程度のやさしいタッチである。
「でも、これが最も難しくて重要な工程。ヘッドのエッジをいかに自然に滑らかに仕上げることができるかで完成度が大きく変わるんだ。削りが少し不均一なだけでラインがうねって見えて使い物にならなくなってしまうのさ」
仕上げ研磨の大切さと自然な質感を波に磨かれた丸い石で表現し、なおかつ基本的にはスタッフしかいないファクトリー内に置くものであっても、サークルTを書いてアーティスティックに仕立てている。このあたりがキャメロンらしいクラフトマンシップとデザインセンスだと深く感心し、いつか記事にしたいと温めていた。
現場にて「この石、写真を撮っていい?」と聞いたが答えは「No」。そう、スタジオの中は基本的には撮影NGなのだ。だから今回は仕方なしに日本の海岸で拾ってきた石に、サークルT を描いて写真を撮って載せた。あくまでもイメージとして見ていただきたい。ちなみにスタジオで見た石はもう少し厚みがあって真円に近かったように記憶している。手描きのサークルTの出来栄えは、たぶん私の方が上である(笑)
