
テーラーメイド r7用のムーバブルウェイトキットを納戸から引っ張り出してきた。どこにしまったのか忘れてしまい、事務所を調べ、倉庫を漁り、もうここになければ「誰かにあげちゃたんだ」ということになる最後の砦、 自宅の納戸をガサゴソした。そして、首尾よく発見した懐かしいシルバーのケースだ。
これを思い出したのにはもちろん理由がある。

それは2026年モデル「Qi4D」の発表イベントで、トルクレンチとウェイトの入ったケースをノベルティでいただいたからだ。そういえば、こういうやつ持ってたなと思い出したのだ。

テーラーメイドのウェイトテクノロジーには個人的に思い出がある。r7クアッドドライバーが発売されたのは2004年のことだが、当時、ゴルフ雑誌の編集部にいた私はカールスバッドのテーラーメイド本社を訪ね、開発責任者だったブノア・ビンセント氏に最新「r7」の開発背景についてインタビューした。その時に、ブノア氏はおよそ1時間30分、いかに動かせるウェイトシステムをヘッド設計に組み込むのが困難であったのか。ホワイトボードに図解を書きながら熱く語ったのである。とくに重たいウェイトをいかに固定し、インパクト時に動かさないでいられるか。その大変さと凄さを熱く語っていた。
衝撃で前に行きたがるウェイトをヘッド内部に薄い壁を作って受け止め、ウェイト自体もテーパーのついた円錐状にして「かしまった状態」を作る。とにかくヘッドを破損せずにウェイトを固定するために複雑なウェイトポートを設計し、それを鋳造で実現するために金型を細分化して作らなければいけない。その金型を最終的にはヘッド内部で全部バラして外に出さなければいけない、などなど。フランス訛りの英語でブワー!と説明されたのをよく覚えている。
1時間半かけて、彼が言いたかったことは「簡単にやってるように見えると思うけど、ここまで来るのはほんとに大変だったんだぜ」ということ(笑) それくらい20年前はヘッドにウェイトパーツを着脱、交換(入れ替え)する機構を作ること自体が難しかったのである。おそらく、こうした細かなメーカーの要求をクリアしようとすることで、ヘッドベンダーの鋳造技術は飛躍的に向上したのだと思う。その後に登場するスリーブシャフトを受けるネック周りの構造やサウンドリブなどの衝立構造も、あるいはウェイトポートの開発がなければ容易には実現できなかったのではないかな、と思うほどだ。
ちなみに、r7の時はMWT(ムーバブル・ウェイト・テクノロジー)と呼ばれていたが、現在はTAS(トラジェクトリー・アジャストメント・システム)と名称を変えている。動かせるウェイトが当たり前となり、今はそのウェイトを動かせる技術が「弾道を調整する」ためにあることを、改めて直接的に表すようになっているわけだ。
さてさて、私がここで思うのは、果たして我々ゴルファーがこれらのウェイトシステムを理解し、使いこなせるようになっているかということである。22年前に端を発し、テーラーメイド以外のクラブメーカーも参入して「動かせるウェイト」は標準装備といえる状況になってはいる。では、その活用度はいかに?
シャフトスリーブについてもそうだが、これらの可変機能を活用してゴルファーが「セルフチューニング」することは、普通に考えたらハードルが高いことに変わりはないように思う。
昔と違うのは各メーカーがフィッティングを軸にクラブを販売するようになってきていることだ。専門知識のあるフィッターがヘッド、シャフトを提案するだけでなく、必要に応じてウェイトのポジションやシャフトスリーブの位置を可変してベストを提案する。そして、購入後使用する中で、こういう傾向になったらウェイトをこうする、スリーブをこうするなどの対処法(活用法)を合わせて購入時に伝えることで、ゴルファー自身が積極的に可変機能を理解し活用できるようになっていくのではないかと思う。
ウェイトキットを見て、20年前のことを思い出した新年。課題はこのウェイトを付けるヘッドを持ち合わせていないということだ。
的なw
