
毎朝のパット練習は欠かさない。フェース上には打球痕がくっきり浮かぶ。
そんなふうに書いたら、こいつすごいなと思う人もいるだろう。
でも、この打球の痕は本当ではない。

早朝のグリーンではボールに砂が付く。私はあえてボールを拭かずにパットを続ける。フェース面にも砂がつくがお構いなしにパットを続ける。

そして、砂が噛んでフェースに傷が入る箇所(打点)が定まったところで、その一点を指の腹でちょっと押し気味にしながら砂を払う。砂粒がフェース面でガリっとくる感じを指先で感じながら。

そうやっていると、このようにフェース面にくっきり打球痕が現れるのである。
つまり私は意図的に打球痕をつけたのだ。
用意は周到だ。まず、フェースのブラスト面に薄めた酸化皮膜剤(通称ガンブルー)を塗り、一旦フェースの色味を濃いめに平均化した。その方が自分の打痕を見極めやすいし、コントラストもつけやすい。その上で、朝の練習時はわざと砂が多く入ったグリーンにいってボールを打った。こうして、あたかも20年使ってきたかのようなパターに仕立てたのである。
かつて、「スコッツデール」時代のANSERパターが流行った時、黒色化したパターヘッドの打球面だけが光るプロのパターを見て、駆け出し記者の私は「さすがプロだ。毎日練習しているとパターもこんなふうにホットスポットが残るのか」と感動した。
しかし、そのパターを使うレジェンドプレーヤーはこう言った。
「人のパットを見ている時とかに、指でここを触わる癖がついているんだよ。フェースのいいところで打ちたいっていうおまじないみたいなものかもしれない」
ブロンズや真鍮ヘッドのパターが全盛の時代は、指先をぺろっと舐めて打球面をすりすりするプロもいたという。そうやってフェース面の色味にコントラストをつけて、ホットスポットで打つを意識を高めたのだ。
タイガー・ウッズのニューポート2 GSSにも、フェース上目にホットスポットがくっきりと浮かんでいる。「さすがウッズだな」と思うと同時に、ベテランプロの話を思い出し、ウッズもあるいはおまじないをかけているのかな?と思ったりもする。
いずれにしても長く同じパターを使っていないと、フェースに痕なんて残りはしない。長く使っていこうと思わなければ、打球痕を残したいとも思わないだろう。
偽りの打球痕かもしれないが、たぶん私はこのパターが気に入っているのだ。だからこそ、毎朝打つし、毎朝フェース面を見て、指先で砂を払う。ちょっとガリっとくる感じで。
