キャディバッグのねだん

ゴルフショップに行くと、あまりにキャディバッグの値段が安くってびっくりする。2万円台で結構良さげなのが買える。僕らが工場にお願いして作ってもらっているオリジナルキャディバッグの工賃よりもお安いのだから、もうお手上げである。

もちろん、同じクオリティとも思わないが(ここ重要)。買い手にとってはあまり気にしない細かな部分のこだわりだったりもするし、傍目には僕らのキャディバッグは馬鹿みたいに高いと思われてるんだろうなと思う。

でも、世界のどこであろうとキャディバッグがフルオートメーションなんかで作られていないのは確か。特殊な筒ミシンを使って、太い針と糸でひと針ずつ縫い進めていく。キャディバッグ一本作るために何枚もの抜き型や足の長さが違うリベットなどたくさんのパーツが必要となる。その上、プリント、刺繍、、、。

それで2万円くらいで売っていいのだろうか? と思ってしまう。言い方を変えたら、キャディバッグは「ハンドメイド」製品なんだから。

工賃を抑えることで低価格を実現していけば、当然工場は疲弊し破綻する。キャディバッグの生産は手間(時間)がかかる。大手メーカー品を大量に請け負うほど、利益のとれない仕事で製造ラインが埋まってしまうのだ。日本国内のキャディバッグ工場はそうやって数を減らし、今はもう3軒ほどを残すだけとなった。

今はなんとか頑張っているが、将来的にはなかなか厳しいと言わざるを得ない「手仕事」の世界である。

同じ手仕事で作られ、今も堅実に残っている「民芸家具」の椅子。探せば安い椅子がごまんとある中で、堅実に、今も松本で頑張っている。残れている理由の一つが、その価格設定にあると思う。生み出すもの一つ一つできちんと利益が出せる設定。ショールームを訪れる一見さんは価格札を見て「高っ!」と目を丸くしている。そういうお値段だ。

それで買ってくれる人がいるなら、そのほうがいいに決まっている。そうではないから、安く作って卸す努力をしなければならんのだ。きっと、そんな風に怒る人もいると思う。

でも、手間を考えたらもっと高くてよい製品は、世の中にはたくさんある。値段だけでなく、製造プロセスやモノ作りの背景をしっかり伝えていく。こんなに手間ひまがかかっているのか!と理解していただく。そういう地道な情報発信によって、大切な作り手の暮らしが保たれる。そんなふうに思うのだ。

私は、キャディバッグの製造工場に何度も行っているので、どれだけ手間のかかる製品なのかを知っている。だから、基本的に出てきた工賃見積もりを値切ろうとは思わない。工場も決して吹っかけてくるようなことはしてこないから。そこの関係性の中で付けられる「下代」「上代」は適価であると思う。最後は、買っていただいた方に使った結果、「これは格安だ」と思ってもらえたら最高。そう思ってもらうには、とにかく“いいモノ”でなければならない。

ゴルフクラブなど、道具の記事ばかり担当してきたのは、モノ作りの背景を伝えることで値段以上の価値や魅力をそれぞれの道具、ブランドに感じて欲しかったからだ。これからもできれば、そういう背景を伝える記事を書いていきたいと願う。

高価格なのに「格安」だと思ってもらうために、とにかく“いいモノ”とは何か?をと考え、こだわり続けたい。

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在