ええクラブ、ええセット

ラウンド前日、空のキャディバッグにさて何を入れていこうかと考える。それが楽しかった日々。今はちょっと違う志向に。

いつからこんなに単品というか「別腹」として、ゴルフクラブを考えるようになったのだろうと思う。ドライバーはドライバー、アイアンはアイアン、ウェッジはウェッジ、パターはパターでそれぞれに「ええやつ」を探し、手にいれる。

それだけを見たら、どれもそれなりに人気があって、名器と呼ばれていたりもする。「ええやつ」には違いないのだ。でも、結果がいまいちだと「もっとええやつ」がないかと探し始めてしまう。久保田利伸風にいえば、Oh, What A Night! 旅路。

最近、「ええセット」が買えたらと思う。「ええやつ」の寄せ集めではなく、「セットとしてええやつ」を。「ゼクシオ」の成功って、そうだったんじゃないかなぁと。同じターゲットゴルファーに向けて、同じコンセプトでドライバーからパターまでを作る。ゼクシオを使っておけば、間違いはない。そう思わせる統一感があった。開発する人も「ゼクシオ感」「ゼクシオ観」を損なわないように細心の注意を払い、「多くを変えないようにしつつ、大きな進化をさせる」という無理難題に挑戦し結果を出していた。既存ユーザーを決して裏切らないモノ作りだ。

選べる、というのはもちろんユーザー本位であるのだが、どうだろう? ゼクシオに限っていうと「エックスeks」シリーズが登場したことで、ブランドとして少し焦点がボヤけてしまった。そんな感じがしないだろうか。個人的には「選ぶ必要のない」ゼクシオが、選べるようになったことで、コアユーザーにとっては「自分のゼクシオ」ではなく、誰かのゼクシオになってしまった。あるいは「自分はどっちだろう?」という迷いの始まりになってしまった。そんな気がしてならない。

ここにきて、ワンブランド、ワンターゲットであることの大切さを実感する。

たぶん、ゴルフ道具である限り「みんなの○○」は無理がある。だから「あなたの○○」、「あなたは○○」と自信を持ってピンポイントでお勧めして欲しい。セットとして(笑)

昔は全部ゼクシオなんておじさんみたいで「カッコ悪い」と思っていたけれど、今はむしろ全部ゼクシオの人を見ると実に合理的で、クレバーな感じに見えてしまう。もちろん、そもそもゼクシオが自分に合っているのか?という問題はあるが、自分に合うゴルフクラブが「セット」で売っていたら、それで迷いなくゴルフをやってみたい。そんな感じがするのだ。

今はひとつのブランドからドライバーヘッドを数種類、アイアンも数モデル、ウェッジ、パターはそれこそ無数にラインナップされ、シャフトも無限にある。「フィッティング」して買う時代だ。それはもちろん素晴らしいのだけれど、「フィッティング」せずとも、「選べず」とも、コレでいいやと思えるような。ゼクシオみたいにターゲットを絞り込んだ「コンセプトクラブ」もまた魅力なのでは?

そんなふうに思っている2025年の夏だ。

 

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在