オリジナルロフト

1992 SPALDING TOP-FLITE LT GRIND PWのロフト角を測定

現在愛用中、スポルディング リー・トレビノグラインド/ピッチングウェッジのロフトを測ってもらった。50°くらいだったらいいなと思っていたら、やはり49.5°でニヤリ。1992年当時でも、ピッチングウェッジのオリジナル(ノーマル)ロフトは50°くらいだったことがこれでわかった。

実は、私も、ロフト計測してくれたゴルフフィールズユニオンゴルフ店の小倉さんもピッチングウェッジのロフトは48°がノーマルという感覚があった。おそらくそれは「ニューノーマルロフト」になって以降にゴルフを始めたからだね、という話になった。

ニューノーマルロフトとは、オリジナルよりもストロングロフトに設定されたもの。その発端はジャンボ尾崎、そして中嶋常幸のパーソナルアイアンにあると思う。P/SやAW、あるいはFなど今でいうところのギャップウェッジ(ロフト53°くらい)をセットに加えたアイアンモデルの登場。それがピッチングウェッジのロフトは48°がノーマルというイメージを作り上げていったのだと思うのだ。

ストロングロフトの先鞭をつけたのはジャンボ尾崎で、そのパーソナルアイアン「ジャンボMTN3プロモデル」のピッチングウェッジのロフトは、おそらく47.5°くらい。その影響をバリバリ受けた中嶋の「TN-87」のピッチングは48°。現在50歳前後の、とくに日本のゴルファーは、ゴルフを始めた時にはもうセミ・ストロングロフトになったアイアンモデルを“ノーマル”として育っているのである。

アメリカでは、ツアーモデルアイアンのピッチングウェッジロフトは50°〜49°で変化しなかった。タイトリストツアー系アイアンのピッチングウェッジが48°になったのは「DCI962B」。1997年製デビッド・デュバルのパーソナルモデル的なアイアンだった(当時のアマ向けモデルDCIオーバーサイズのPWは47°)。2000年の「DCI990・B」ではまた49°に戻っているのがおもしろい。

タイトリスト(US仕様)ツアーモデルアイアンの市販スペック

2010年を越えるとタイトリストツアーアイアンのロフトもストロングがノーマルになる。2011年「712MB」ではもう今と同じ47°のピッチングウェッジになっているのである。

こうしたツアーアイアンのロフト変遷を見ていくと、ピッチングウェッジ(アイアンセット)がストロングロフト化していった時期は、本格的なウェッジシリーズ(ボーケイ・デザインウェッジ/96年始動・98年市販)の誕生と重なっており、ピッチングのロフトが立ってしまってもサンドウェッジの間を埋める「ギャップウェッジ(50°)」があれば大丈夫!という考え方が一般的になっていったと思われる。

いつの間にか、ピッチングウェッジはアイアン番手のつづき、10番アイアン的なモノになり、ロフト50°は「ギャップウェッジ」の担当となっていった。

さてさて、「ピッチング」の代わりが「ギャップ」でできているのだろうか? 名は体を表すという。ギャップを埋めるためのモデルは、「ピッチング」するためには作られていないのではないだろうか?

実際、49°や50°のオリジナルロフトのピッチングウェッジで、どんなショット、アプローチができる(できた)のかを、もうほとんどのゴルファーが記憶していない。あるいはまったく知らない。50°のギャップウェッジは使ったことがあっても、50°のピッチングウェッジ(ツアーモデルの)を使ったことすらないからだ。タイガー・ウッズを除いては。

MOE86アイアン/2022年

そうそう、ピッチングウェッジとは書いていないが、最新モデルの「MOE86」アイアンの最終ロフトは49°であった。タイトリストアイアンの使用歴が長い浮世氏の使い勝手を考えて決められたロフト設定だ。必然的にアイアンの最後はタイトリストツアーアイアンのオリジナルロフト49°になるのだな、と感心した。

フルショットだけでなく、グリーン周りでの使い勝手を考えること。それがピッチングウェッジのあり方を変える。

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在