ディックさん

キャロウェイゴルフの草創期を支え、ヘッドの大型化、大慣性モーメント化、フリーウェイトによる重心設計、部分肉厚フェース、カーボンボディ、チタンカップフェースなど、まさに現代クラブの基礎設計を確立したリチャード・C・ヘルムステッター氏が逝去されたという。

個人的には、これで本当に一つの時代、自分の中で「最高」だった、熱きクラブ開発の時代が終わってしまったようで、とても寂しく思います。

ゴルフ雑誌でギア担当している時期、本当に何度もカールスバッドに赴き、ディックさんに話を聞きました。ディックさんはこちらが質問をすると、「あなたはどう思う?」と逆に質問をしてきました。おそらく、その返答次第でどこまで話すべきかを量っていたのだと思います。

的外れな答えをすれば、通り一遍の返答しかしてもらえない。だから、ディックさんと話をする時はとても緊張しましたし、質問内容はもちろん受け答えにまで全神経を集中させて臨んでいました。

Demonstrably Superior & Pleasingly Different

明らかに優れていてその違いを楽しむことができる

ディックさんは、イリー・R・キャロウェイが掲げた製品哲学を誰よりも大切にしていた人だと思います。売り物ではなく、ゴルフをもっと楽しむための道具を作ろうとしていました。だからこそ、効果が明らかでない製品を世に出したくはなかったのだと思います。

逆に、効果が明らかであれば先例にないスタイルでも躊躇なく取り入れました。そうやってゴルフの楽しみ方を大きく変えていったのです。道具はゴルフを楽しむための手段に過ぎない。テクノロジーも目的に近づくための手法に過ぎないのだと。

ENJOY THE GAME.

当時のキャロウェイゴルフのスローガンです。いい時代だったと感じるのは製品開発の目的が明確だったからに他なりません。だから私も、ひとりのゴルファーとして、わくわくしながらディックさんの話を聞いていたのです。そして、そのわくわくを「必死に」責任をもって誌面を通じて伝えようとしていました。

ディックさんとお話しする機会をたくさんいただいた者の責任として、これからもその足跡、功績を伝えていく役割を果たしたいと思います。

たくさんの経験をありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在