


昔の道具を見て、「今の時代だったらさ、簡単にできるよね」と誰かが言った。今の技術を持ってすれば、過去のローテクプロダクトなど簡単に再現できるだろうと。
でも、多くのものは再現してもらえない。工場になんでわざわざ面倒なコトを、と門前払いをくらっちゃうのもあるが、そもそもモノを構成する「素材」が手に入らない。バッファローヴィニールは何千メートル単位で特注しないとない。バッグ本体と持ち手を繋ぐ「金具」すら同じのはない。でべそのリベットもない。虎斑美しいミズメザクラもそろそろ良い材が無くなるという。プレアクシネット時代のブルズアイのフィール。あんなソフトな真鍮は70’sだって使っていなかった。
技術があっても「昔」と同じにはならない。スキャンして3Dプリンタで精密に同じ形に仕上げたとて、同じにはならない。某メーカーが、別ブランドの某人気定番パターを寸分違わず再現した!というパターを打たせてもらったことがあるが、どのあたりが再現なのか全くわからなかった。正直、1mmもかすってなかった。寸法や素材だけじゃないんだなって改めて思った。
昔と同じモノは、その当時にしか作ることができない。だからこそ、オリジナルを大切に使う。工場に「これと同じで」とお願いして、同じモノが出来上がってきたことは一度もないから。
だから、作り手としては、今できることで「昔よりいいモノ」を目指す。同じじゃないけど、もっといいと思えたら成功、最高。