がんばれニッポン

値上がりしないモノなどない世の中。すべてが繋がっていることを実感させられる。

一方で「手仕事」で作られる伝統的なモノについては、もっと評価されなくてはいけないと思う。例えば黄楊(つげ)の櫛。こんなに繊細な手仕事であるのに、売られている値段は驚くほど安い。別府つげ工房などの「ブラシ」はそこそこの値段になっているが、伝統的な「櫛」については昨今は需要がないのか、労力に見合わない売価が設定されているように感じる。これでは早晩、事業継承する者がいなくなってしまうだろう。

黄楊の櫛やブラシには多くの場合「椿油」が浸み込ませてある。伊豆大島出身の私には非常に身近な存在ではあるが、「椿油」で有名な島で生まれ育ったというだけで、暮らしの中で「椿油」を使った記憶はない。椿油で揚げた土産物のおかきを食べたことがあるくらいだ。

50も過ぎて、たまたま黄楊の櫛に興味を持って使うようになり、そのメンテナンス用として付属していた「椿油」と出会った。木のたまごや木のたばこのメンテナンスで蜜蝋ワックスに始まり、オリーブ油や米油といろいろな油、ワックスに触れてきたが「椿油」の上質感は圧倒的だった。浸透力もあるし、ベタつきもない。薄い皮膜なのに保湿力が桁違い。恥ずかしながら「椿油」の偉大さを今更知って、たまげているのである。

櫛もそうだが椿油も手仕事によって生み出される「手間」のかかる名産品だ。大量にできないぶん、単価は高く設定されなければならない。しかしながら、現代人は「手間」にお金は払わない。どんなプロセスで作られていようと売価を見て「高い」というのみである。

モノ作りの背景にある想いや手間、プロセス。そしてそのモノが生み出す唯一無二のパフォーマンスと暮らしへの影響。使い捨てではない堅牢性や持続性。それらを知り、総合して「いくら」が妥当であるのかを自分自身で判断することがとても大事になってくる。がしかし、、、、、

そんなことを言ったとて、である。品質がいい米でも4000円なら「高い」し、古古古古でも1900円なら「安い」とされてしまう世相である。世相とは世の「ありさま」のこと。食えればいい、髪をとかせればいい、ボールを打てればいい。全部そこそこでいいから、なるべく安くで。そんなふうに見える。

我がニッポン、なかなか厳しい感じである。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在