やさしさが難しさに変わる時

「ウェッジが難しい」「ウェッジが苦手」という話を聞くと、とてもモヤモヤする。ショートゲームを「やさしく」するために開発された特別なゴルフクラブが「ウェッジ」であるのに、誕生から90年以上経ってなお、「難しい」と言われてしまうのは、なぜか。

ショートゲームは特別なクラブを使ってなお「難しい」ということなのかもしれない。でも、「ウェッジ」自体に難しさを感じさせてしまうところはないのだろうか? と最近ちょっと考えてしまうのだ。

これはタイトリストが作成した前重心化したテスト用ウェッジだ。ロフトの大きなウェッジほど重心は後ろに、そして高くなりやすい。それがある意味「難しさ」につながっている面もある。そう思っているからこそ、エンジニアは前重心(低重心)にしたらどうなるだろう?ということを確かめずにはいられないのだと思う。

ソール(グラインド)は間違いなく進化し、その選択肢も増えているが、ソール選びだけでハイロフトウェッジの難点を補うことは「難しい」。フェース面積の大きいウェッジでロフトを大きくすれば、重心が高くなりインパクトでフェースが上を向きやすくなるのは自然の成り行き。ハイロフト+インパクトでフェースが上を向きたがるのだから、ボールを捕まえにくいのは当然だ。そのことを踏まえずして、大きく振ればボールは高くしか上がらない(つまり距離が出ない)。アマチュアの多くはこのハイロフトウェッジの特性にやられてしまっているわけだ。これがサンドウェッジが「難しい」と言われてしまう一つの要因。でも、

バンカーでなら、このフェースが上向きになりたがるウェッジの特性は実に歓迎すべきこととなる。インパクト直前でフェースが上向きになればバウンス効果がさらに大きくなりやすく、自然なエクスプロージョンショットになりやすいからだ。上手い人の中には自分でやるから勝手に上向きにならないでよと考える人も多い。

冷静に考えてみればサンドウェッジとは、そもそもバンカー脱出の専用クラブとして開発された「特別なゴルフクラブ」だったのだ。バンカーで使いやすければそれだけで十分使命を果たしているといえる。専用道具をさまざまな場所で使いやすい汎用性のある「やさしい道具」として捉えてしまうから、結果として「難しい」クラブになってしまうのかなと思う。

どんなクラブなら寄せやすい?と考えて、個人的にもいろいろ試しているが、今のところマッスルバックアイアンのセットものPWで寄せた時が、最もいい感じにボールをコントロールできる気がしている。ロフトは49°か50°。ウェッジシリーズの50°とはちょっと違う感じだ。フェースが上を向きにくく、自然にボールがフェースに乗ってくる感じがアイアンセットのPWにはあるような気がする。

ともあれ、バンカーショットで使いやすい以上に最高のサンドウェッジはない。寄せは寄せのスペシャリストを楽しみながら見つけたい。

スパイカーが打ちやすい以上に最高のトスはねぇんだ。

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在