
三つ子の魂、百まで。幼き頃に覚えた感覚は生涯変わることがないと言います。
ゴルフのように「道具」を駆使して弾道を操る競技では、最初に親から与えられた道具(ボール・ゴルフクラブ)がスイングやプレースタイルを決定づけるとされています。
80年代にゴルフを始めた世代の中には、90年代中盤以降激変したゴルフギア(とくにボール・ドライバー)の変化に対応仕切れなかったプレーヤーが多くいます。糸巻きボールとパーシモンドライバーで育んだプレースタイル。しかし、どちらも21世紀を待たずに生産されなくなってしまいます。
ドライバーは大型ヘッドのみ。ボールはソリッドのみ。選択の余地はありません。
現在、世界No. 1のスコッティ・シェフラーは1996年生まれ。ゴルフを始めた頃にはプロV1もボーケイウェッジも揃っていた世代です。日本の石川遼は1991年生まれ。初めて手にしたゴルフクラブはまだフルサイズではなく、軽く、長くもなかったでしょう。たった5歳差とは言え、道具の変遷のタイミングから見れば今と変わらぬ道具でゴルフを始めることができたシェフラーは幸運だったと言えるでしょう。
石川のデビュー期のセッティング。やはりどこか90年代の残り香が漂います。その後、キャロウェイと契約したわけですから、道具に対してアジャストする宿命を背負ったことは確実。長きにわたるスイング改造。私にはずっと道具との調整作業を続けているように見えます。
最もゴルフに没頭できるのは学生(ジュニア)時代だと思います。その「濃密な時間」にどんな道具でプレーしていたか。それがスタイルを決定します。
ちなみに、タイガー・ウッズは1975年生まれですがご存じの通り、2000年以降に絶頂期を作っています。さすが天才、うまく激変する道具に対応したのでしょうか? いいえ、彼の場合はデビュー期から今まで激変する道具事情に合わせることをしていないのです。とくにアイアン、ウェッジ、パターにおいては「変えていない」と言ってもいいくらいです。
ウッズには、最新を選ぶ権利も、「いつも通り」を選ぶ権利(パーソナルモデル開発)も与えられていたということになります。変わらぬプレースタイルは、変わらぬ道具が作っています。ここにもウッズの非凡さを感じます。
いや、本当は誰にでも選ぶ権利は与えられています。変わらぬ道具を自らの意思で選べることこそが「才能」なのかもしれません。