井上誠一の愛した栗木

札幌ゴルフ倶楽部の新しいコースとして白羽の矢が立った輪厚の用地に生えていた栗木は、設計を託された井上誠一よりも年上だった。この栗木を活かし、彼が配した高低差のあるバンカーを満喫したゴルファーは何万人いるのだろうか。

 

S.INOUEとサインされた1957年のオリジナル原図に描かれた

バンカーがひとつ現存しないなか

その後の六十有余年の変化を加味しても

栗木の重要性は増している

 

失うことが許されない栗木を守るため

設計哲学を後世まで残すため

栗木の根を守るよう

バンカーエッジの応急処置をした

 

歴史あるバンカーを意識なく削りとるという事は

人間と自然の営みを削除するようなもの

可能な限り雰囲気を残したく

ほんの少し工夫して応急処置をした

 

伝統は護る意思がなければ消え失せる

そんな時代に今はなっている

 

栗木の根を守るよう修復されたバンカーエッジは、周辺のアンジュレーションにも違和感なく追従する。この曲面再現は井上誠一だったらしたであろう作業だと考えた。

 

 

 

この記事を書いた人

八和田徳文

Cultivator/Norifumi Yawata
ゴルフの仕事に携わって四半世紀。ゴルファーの一人として、ゴルフコースデザイナーの一人として、ゴルフに纏わる想いを綴ります。肩の力を抜いて愉しめばゴルフはもっと面白いはず。
ゴルフコース設計家・ゴルフ文化愛好家・芝生管理アドバイザー