癖、治らじ

2002? Titleist Pro V1★392

雑誌の記事を書くために、現代クラブに繋がるターニングポイントとなったクラブ、源流ともいうべきクラブをコレクションしておく。ギア担当編集兼ライターとして30年以上、歴史的背景を含んだ物語を書くときのために古いモデルを手元に置いておく習慣がありました。

しかし、今のゴルフ媒体にそうした「歴史的背景を含んだ物語」の需要はありません。ゴルフメーカーもそうした「歴史的背景を踏まえたブランド訴求」を必要としているようには見えません。つまり、私の集めてきたモノ達も、私の書く物語も、すでに価値あるものではなくなったのです。

DUAL COREの記述がありますね。これが何に繋がっていくのか、想像するのは難しいことではありません。

もうそろそろ、手元にある古いモノ達を整理していくべきでしょう。この先、これらを活かす機会はないのですから。それでも、長年の癖というのは簡単には抜けませんね。また古いゴルフボールを買ってしまいました。ここを逃すと二度とデッドストックなど手に入らないと思い、ついつい買ってしまうのです。

それと、タイトリスト ゴルフボールなら「歴史的背景を含んだ物語」を書いても、未来のゴルファーにも多少は興味深く感じてもらえるのではないかと思っているからです。その始まりから現在まで、物語が繋がっている唯一のブランド。タイトリストにはそんな印象を抱いていますので。

現在。

新しいモノだけで見てしまうと、各ブランドの製品はどれも高性能で選びようがありません。どこの何を使っても過不足なくゴルフを楽しむことはできるでしょう。

では、何を使ってもいいのか?

それこそ、それぞれが自問自答することだと思います。何使っても一緒と思うのも良し。コレがいい!コレが最高だと思ったモノでゴルフを楽しみたいと、強くこだわりを持つのもいいでしょう。私は「コレでなきゃ!」と思ってもらいたくて、開発ストーリーを一生懸命書いていたように思います。私自身、結果は似たようなものだったとしても、愛せるモノを使いたいからだと思います。

スターと同じ時期、Pro V1♦︎392というのもありました(右)。こちらはツアーテストされただけで発売には至らなかったと思います。

こうして並べて写真を撮った後、このコレクションを活かす機会はないのかもしれません。それでも、2000年にPro V1が出て、2003年にPro V1xが出たという公的なタイムラインの間に、様々なテストマーケティングモデルが存在していたことを知ってもらうことは、意味があると思います。

Pro V1、つまりウレタンカバーのソリッドボールから始まったことは「ものすごく細かく性能差をつけたゴルフボールの開発」なのです。糸巻き構造からソリッドコアになったことで、千差万別のゴルファーニーズに応えることができるようになり、その性能を糸巻きバラタよりも精密に一貫性を持って提供できるようになった。それが本当のエポックメイキングなのです。

あまり見かけないサイドスタンプの古いPro V1は、2000年代初頭にゴルフボールの設計自由度が飛躍的に上がったことを実感させてくれる、マイルストーン。個人的にはそう思っています。

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在