過ぎゆく季節に

踏み外すと膝より深い雪道をあるき、山門をくぐり、社に手を合わす。あの春からお気に入りの散歩道のひとつ。

 

出会いと別れの季節であるけれど

この頃別れのほうが多くある

恩師に先輩に先逝く友に

さよならを言うことが少なくない

 

まだ若いつもりでいるけれど

統計的に古いほうに分類される

そういう年頃だ

時間だけが確実に過ぎてゆき

加速度的に過ぎてゆき

もう既に今年も三月経過した

 

したいことを随分諦めて

しなければならないことに限定し

丁寧に対処してきたつもりだけれど

やり遂げられたことは

ほんの少しだけ

 

教わったことを後世に繋ぐことも怪しくあり

必要性を否定されているようにも感じることもあり

時代のせいにしてしまおうと

保身的に考えるも諦めきれないこともある

 

素直にソメイヨシノの開花を喜べず

春がもう少し先であって欲しいと願いつつ

南からの開花宣言を逃避して

雪積る冬山に身をおくことで

こころ落着く春である

 

先人が付けてくれた道も歩く人が少なくなると消えていく。流行り過ぎる必要はないけれど、簡単便利に流れていく時代に淋しさを覚えつつ、消えないように人通り少ない雪道を踏みしめる。

この記事を書いた人

八和田徳文

Cultivator/Norifumi Yawata
ゴルフの仕事に携わって四半世紀。ゴルファーの一人として、ゴルフコースデザイナーの一人として、ゴルフに纏わる想いを綴ります。肩の力を抜いて愉しめばゴルフはもっと面白いはず。
ゴルフコース設計家・ゴルフ文化愛好家・芝生管理アドバイザー