
自分が生まれる一年前に発刊された写真集。写真自体もそうだが、装丁やレイアウトに惹きつけられる。
凝ったことはしていないが、よくよく考えられている。コンピュータデザインではない時代。アタマの中で仕上がりをイメージ出来なくてはいけない。
写真を撮るだけでなく、文も書き、装丁、レイアウトまで。田淵行男さんには緻密、丁寧、根気、静けさ、頑固さ、孤高…いろんなものを感じる。
頭の中のイメージがそのまま形になったような本だが、ページをめくると後半部の解説ページ冒頭に、「編集方針もあり、自分が描いていた当初思惑通りの形にはならなかった」と記されていた。この出来上がりでも不満があるとは驚きだが、著者と編集者のせめぎ合いが垣間見られて面白かった。完全に自由でない方がいいものになる。
未達感があるから次に向かうことができる。