未達の魅力

田淵行男「山の季節」昭和44年発行 朝日新聞社

自分が生まれる一年前に発刊された写真集。写真自体もそうだが、装丁やレイアウトに惹きつけられる。

凝ったことはしていないが、よくよく考えられている。コンピュータデザインではない時代。アタマの中で仕上がりをイメージ出来なくてはいけない。

写真を撮るだけでなく、文も書き、装丁、レイアウトまで。田淵行男さんには緻密、丁寧、根気、静けさ、頑固さ、孤高…いろんなものを感じる。

頭の中のイメージがそのまま形になったような本だが、ページをめくると後半部の解説ページ冒頭に、「編集方針もあり、自分が描いていた当初思惑通りの形にはならなかった」と記されていた。この出来上がりでも不満があるとは驚きだが、著者と編集者のせめぎ合いが垣間見られて面白かった。完全に自由でない方がいいものになる。

未達感があるから次に向かうことができる。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在