コーン!という打感と捲れるような弾道が気持ちよくて、パーシモンのフェアウェイウッドを気に入って使っている。どうもスチールシャフト付きはうまく打てないので、もっぱらカーボンシャフト装着のやつを探す。そうなるとだいたい本間ゴルフのモノを買うようになるのである。
いろいろ買ってみると、当時の本間ゴルフがものすごく発展的というか、情熱的というか、とにかく色々なことを「独自」に考えていたブランドだったことが改めてわかって、とても興味深い。もちろん、その熱かった頃、私もゴルフ業界の末席に居場所を得ていたのだが、なぜか今持って本間ゴルフとは深い縁がない。きちんと取材したことがないので、当時のこともよくわかっていないから、逆に今手にとっている当時の本間ゴルフのクラブが新鮮で、魅力あるモノに映るのだと思う。
昨年入手した「LB-606」というフェアウェイウッドは、全面ソールプレートな上、フェースが樹脂+チタン?+真鍮鋲のようなマルチマテリアルな仕様になっている。90年代後半、時代はメタルからチタンへと移行し、そろそろ高反発フェースブームが到来する頃のモデルだ。パーシモンウッドのパイオニアとして、メタルに一矢を報わんとする気概が、この複雑な構造に表れている。
同じ頃、本間ゴルフはチタンヘッドのLBシリーズも出している。チタンヘッドにChromeメッキを施した斬新なアイデア。そしてその仕上がりの美しさに、つい、かっこいいとため息をついてしまう。塗装はある意味ヘッドの粗を隠す役割を果たすが、メッキをかけるとなるとヘッドそのものの表面を極めて美しく整えておく必要が出てくるだろう。塗装ではなくメッキという手法を選んでいる時点で、手間暇を惜しまない当時の職人気質が窺える。
この「LB-606」のシャフトには「4035」と書かれた赤いシャフトバンドが巻いてあったが、その数字が何を示すのかはまったくわからない。それでも何となくその「貼られた位置」が気に掛かって、シャフトバンド部を人差し指に乗せてバランスをとってみた。このへんはギア好きならではの行動かもしれないが。
結果はビンゴ。このシャフトバンドは、このクラブのバランスポイントに貼られていた。さて、これは偶然だろうか? 意図しなければここにシールを巻こうとは思わないはずだが。では、この数字が意味するものは?
当時の意図を強烈に知りたくなった。
古いのがいいわけではないし、今のゴルフクラブだって色々考えて作られていることは十分わかっている。でも、こうして縁あって手にした昔のクラブから確実に感じられるエンジニアの情熱に、どうしようもなく惹きつけられるのはなぜだろう。たぶんそれは「独創性」があるからである。
最新のゴルフクラブに希薄なものがあるとすれば、それが「独創性」だと私は思う。こうすれば、こうなるが解明された今の時代に「独創性」は生まれにくいのもわかっている。でも、目指すべきゴールは一つではない。違うゴールを設定したならば、その手法もまた違ったものになるだろう。「独創性」は、ほんとうにゴールは一つか?と疑うところから始まるような気がする。