ゴルフ雑誌でベストパー4とかの特集があるけれど、この佐世保沖の宇久島にある平原ゴルフ場が名を連ねたことは無い。川奈富士にも大島にも素敵なシーサイドホールはあるけれど、海をどういう角度で景観に取り込むか、いろんな観点から推考するとこのホールが劣るとは言い難い。
グリーンまで空中を遮るものは何もなく、350ヤード正確に飛ばせばホールインワンもありうるが、風も計算に入れてその距離を打ちこなすのは無謀であろう。ただし判断をするのは人間であって、コースには一切の制限を受けてはいない。
ゴルフは耳と耳の間でするものだ、その言葉の意味が分かりはじめたら、ゴルフが途端に面白くなる。ゴルフは創造性をもって遊ぶゲームであり、既定路線を正確に狙うだけの可罰ゲームではない。
特に優れるのは、このホールに辿り着くまでの3ホールとのバランスだ。比較的単調なミドルを2ホールこなし、身体がほぐれたころ急激なアップヒルのショート。だいたいはショートホールで大叩きして苦笑い。その次にこのホールが待ち構える。
この後も印象的なホールが続く、そして9ホールを終えて、4番ホールのことを思い出し、もう一度チャレンジしたくなる、そういうホールだ。メモラビリティーの重要性を説くコース評論家がいるが、9ホールの中の順番まで意識して選定しているだろうか。
アルバムを聴くのと同じよう、一曲だけを取り上げてベストソングとすることは可能だけれど、アルバムのなかで活きる名曲もある。個人的にはそういう意識もあって、平原ゴルフ場4番ホールは愛すべき名ホールだと思う。ちなみに設計者、名無しの権兵衛。
メガソーラーに消えるコースだけれども、幸いにして未だ原形を留めている。不便な場所ではあるけれど、そこを乗り越えてみる価値のあるゴルフ場。余命はあと僅か。