
日本から始まったと噂の2つの文化。
いま、ドライバーやパターにヘッドカバーをかけていない人はあまりいないでしょう。ゴルフを始めた時から、大事なクラブにヘッドカバーをかける文化はありましたからね(汗)
さて、そもそもヘッドカバーの誕生の裏には、ある日本人の存在があるといわれています。高畑誠一氏(1887~1978)。日商岩井の創設やゴルフでは廣野ゴルフ倶楽部の設立にも尽力した人物です。1910年中盤ヘッドカバーなるものはとくになく、高畑氏はオーダーメイドした美しいウッドクラブを保護するために、思わずソックスをかぶせたのだそうです。これがヘッドカバーの始まり、いやクラブヘッドを保護する文化の起源とされているのです。その後、欧米でもヘッドカバーをかける習慣が当たり前になったようですが、今のようにメーカーが新製品の付属品として純正カバーをつけることは、80年代になるまでは決して当たり前ではなかったようです。ヘッドカバーはゴルファーが自分で用意するモノ。このため、ハウスキャディがメンバーに手編みのヘッドカバーを作ってあげる。そんなクラブハウス文化も日本では育っていきました。今のようにメーカーが純正ヘッドカバーを付けるようになったのは、テーラーメイドのツアープリファードメタルくらいでしょうか。いずれにしても80年代中盤。そんなに古い話ではありません。
目土文化も日本が始まり!?
もうひとつ、日本発祥といわれているのが「目土(目砂)」です。アイアンやウェッジで削ってしまったディボット跡にサッと砂を入れてあげる。砂は芝生の傷に貼る絆創膏です。この発想も、もともと欧米のゴルフ文化にはなかったものだそうです。よく考えると、納得の理由がちゃんとあります。
フェアウェイ/ラフで使われている芝生の種類の違いが、目土文化のあり・なしに繋がっていると考えられます。日本のゴルフ場(北海道や高地、高原以外)ではだいたいコーライや野芝といった暖地型の芝生が使われます。これらは一つの根から茎が伸び、その茎から葉が芽吹くタイプです。茎が地表近くの地面を「ネット」のように覆い緑の絨毯を作っているイメージです。アイアンやウェッジショットはこの芝のネット(茎)を断絶させてボールと一緒に芝を飛ばしているのです。飛んでいったのは切れたネットの切れ端(茎)で「根」ではありません。なので、削り跡には砂をいれて埋めておけば、砂の間にまた茎が伸びてきて葉を出し、傷口は修復されてしまうのです。削り取っても根は無傷の地面に残っている、というのがポイントです。
このため、日本では飛んでいったディボットを戻さず、ディボット跡に砂をいれる目土文化が広まりました。
一方、欧米では「株型」の芝種が使われています。これは寒冷地芝ともいわれ、日本でも北海道や軽井沢など寒いエリアで使われています。平地でもベントグリーンなどはこのタイプです。この芝は一つの根から葉が直接出ており、これがいくつも密度高く集まることで緑の絨毯が出来上がっています。なので、アイアン、ウェッジで削り取ると、根と葉がもろともワラジのようになって飛んでいきます。強調しますが、「根」がもろとも飛んでいるのでそれを拾ってきてまたカパっとディボット跡にパズルみたいにはめ込めばそのまま根を張り定着する、ということなのです。そんな欧米ですから元々は砂を被せる文化はなかったと考えられます。一説によれば、日本で目土をみた誰かが「これは素晴らしい!」と感銘を受け、米国でも取り入れたのだそうです。もちろん、やり方はちがって、ターフを戻した後にその外周に砂をかけて隙間を埋める。そうすることで根の乾燥を防ぐ効果があると考えたのです。USGAなどのエデュケーションビデオでも戻したターフの外周に砂をかける、と説明されています。

ヘッドカバーにしても、目土にしても。日本人の道具や環境を大事に想う気持ちから生まれたものです。そう思うと、少しだけ嬉しく誇らしくなりませんか? そうした気持ち大切にしたいと思います。ニッポンのゴルファーが創ってきた、世界に誇れるゴルフ文化なのですから。